外で食べる料理の美味しさに味をしめ、すっかりデイキャンプの虜になってしまった。
その中でリピートしているのが神奈川県南足柄市にある旧北足柄中学校をリノベーションした「キャンピース」というキャンプ場。
足繁く通ってしまうのは横浜市内からのアクセスが良いというだけでなく、運営の方の雰囲気が温かく、この日も地元で取れた内山みかんと柚子を分けて下さった。
学校の校庭でキャンプが出来るという童心に帰らしてくれるフィールド。炊事場も廃校をリノベしたキャンプ場ならではだ。
ゴミも持ち帰ることなく、キャンプ場で処分出来るのが嬉しい。
キャンプ場に着くや否やタープを立てる。組み立ての要領がよくなり、成長しているのを実感できるのはキャンプの醍醐味のひとつなのかもしれない。
校庭は山に囲まれ、とても静かなキャンプ場。火を起こし始めると、薪の中に閉じ込められていた水分がパチパチと弾ける音が心地よい。
時折、聞こえてくるのはチャイムの音と子供たちの遊び声。
校舎の時計はお昼を指したまま。時間が止まったままのような錯覚に陥る。
なんとも形容のしがたい平和な時間が流れているのだが、廃校になってしまった以前の経緯を知ると、より感慨深いものとなる。
旧海軍ロケットエンジン実験場跡地に開校
キャンピースとして生まれ変わる前の北足柄中学校は、昭和22年(1947年)、旧日本海軍ロケット噴射実験場の事務所を再利用して開校した流れを持つ。
この北足柄中学校のある南足柄内山地区は太平洋戦争末期、ロケット戦闘機「秋水」のエンジン開発のため、旧日本海軍が極秘にロケット噴射実験場を建造した場所である。
アメリカ軍の長距離戦略爆撃機「B-29」による日本本土空襲を阻止するため、新型エンジンの開発が急務であった。旧日本軍の戦闘機は高高度用の過給機を有しておらず、上空10,000mを優雅に飛行するB-29に対して有効な迎撃を行えていなかったためだ。
そこで酸素を外気へ求めない酸化剤と燃料を全て内部に搭載するロケット戦闘機の開発が開始されたのである。
その実験場として南足柄市内山地区が選ばれたのは、ロケットエンジン開発に必要な酸化剤(過酸化水素)の製造工場(現・三菱ガス化学)が2キロ離れたところにあったからだ。
ロケット戦闘機「秋水」は試作段階のまま終戦を迎え、その2年後にロケット噴射実験場の事務所を校舎として、北足柄中学校は開校した。
その後、1943年から敵国人抑留所で使用されていた標高232mの現在の場所へ移転、半世紀にわたって卒業生を輩出し、2010年に閉校した。
悲しい歴史を乗り越えて
時代に奔流されたこの地ではあるが、今は子供たちの遊び声が響く平和なキャンプフィールド。
その恩恵を然りと受けて、今日も野外で料理に励む。前日に漬け込んでおいたスペアリブ、焼き芋、パエリア、スープカレー。
野外で食べる温かい料理。これがキャンプへと繰り出す原動力となっている。
廃校となった校庭をキャンプ場として再生し、活気を取り戻すのは非常に良いアイディアだ。今はキャンプ場にしか還元できていないが、もっと地元を含めて活気づくような動きへと広がったらいい。
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