温泉旅行の一番の醍醐味は「旅館での過ごし方」にあると思う。
それは温泉に入ることかもしれない。疲労を回復させ、冷え性を抑え、自律神経を整えること。露天風呂では、風で揺れる葉の音に耳を傾け、昼間であれば青空を、夜間であれば星空を湯に浸かりながら堪能できる、それも産まれたままの姿でだ。
それは食事かもしれない。夕食で配膳される小皿に盛り付けられた色とりどりの和食料理。これだけの種類を家庭で準備するには骨が折れる。朝食も焼き鮭、卵焼き、味噌汁、納豆、白米の理想的なメニュー。用意することも片付けることも忘れて、ゆっくり頂けるのも旅館ならでは。
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旅館での過ごし方が温泉旅行を左右することに間違いはないが、同じくらい大事にしたいのは温泉街の魅力、そしてその休憩地点である「喫茶店」の存在だろう。今回、箱根湯本の温泉街で、初日と2日目に喫茶店を訪れたので、それぞれ紹介したい。
純喫茶マイアミ
1951年創業の箱根湯本を代表する昔ながらの喫茶店。箱根湯本駅から徒歩3分と言う好立地にあると言うのだから、たとえ喉がウェッティだったとしても足を運ばずにいられないのがカフェ巡りラバーというものだ。アーケード街にあるから雨降りの日も傘いらず。このありがたみは荷物の量に比例する。
扉をくぐりまず目に留まるのは模様が素敵なステンドグラス。これに木目調のインテリアが相まって、和洋折衷な大正ロマンを彷彿させる内観となっている。
ベルベット生地のソファは座りやすく、純喫茶を構成する要素のひとつとなっている。
じっくり煮込んだ自家製ピザソースを使用したピザトースト、ナポリタンにも惹かれたが、旅路の疲れを癒す手作りケーキセットを注文。
オレンジピール、オレンジの生果汁を生地に混ぜ込んだふんわりしっとりの「シフォンケーキ」とクリームチーズをたっぷり使用し、爽やかなレモンの風味を効かせたスフレタイプの「チーズケーキ」のどちらかを選べる。
普段、チーズケーキ一択だが、この日は箱根湯本の旅情のせいかシフォンケーキを選び、妻がチーズケーキを選んだ。
それぞれ運ばれてくるとシフォンケーキの方が一回り大きく、心の中でガッツポーズしたのは内緒である。コーヒーは定番かつ喫茶自慢のオリジナルブレンドコーヒー。
喫茶室ルノアール 箱根湯本駅前店
ルノアールとはあのチェーン店のルノアールである。「タバコを煙らしているおじさん」と「高価格帯」という印象の強いルノアールである。
そんな先入観を捨てて、是非とも「箱根湯本駅前店」のルノアールへ訪れて欲しい。店内は分煙されており、煙草の匂いは全くない。窓からは箱根湯本を流れる早川が、もう片方の窓からは箱根湯本駅が見えるため旅情感を煽ってくれる素晴らしい立地。
箱根湯本駅、バスターミナルからも近いため、電車、バス、チェックイン時間の待ち時間にもおすすめだ。
ブレンドコーヒーも590円であり、よくよく考えてみたら老舗の喫茶店並であり、ゆっくり出来るのであれば決して高くはない。
旅行先の喫茶店やカフェは旅人のオアシスのような存在だが、特別なのは何も旅行先だけではないと思う。
日常生活に根付いた近所の喫茶店へ足繁く通いたいと改めて思った。いつもの喫茶店では旅先にいるかのような旅情を味わえ、旅先の喫茶店ではホッと一息つける「いつもの日常」を感じることができるはずだ。
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