Leicaのフィルムカメラが欲しい理由

海外単身赴任を終え、夫婦で節目となる記念品をそれぞれ購入しようということに。

いろいろなモノ選びの基準があるけれど、今回は「普段買えないけど、普段から使えるモノ」を選びたい。

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しかし、これが結構難しい。

例えば、テーラードであしらえた高級スーツ。「1着ぐらいは!」という憧れはあるが、自身の体型や見た目の変化で着れなくなる可能性もあるし、高級であればあるほど、細い糸を使っており、どうしても消耗品になりがちだ。

高機能な電化製品も日々の技術の進歩が早く、数年も経てば機能が過去の物となってしまう。さらに電子部品の経年劣化によって、場合によっては買い替えを余儀なくされてしまうかもしれない。

その点、「ダイヤモンドは永遠の輝き」というCMのキャッチフレーズのように、ジュエリーの価値は変わりにくい。妻の節目の買い物としてはよさそうだが、男性向けではなさそうだ。

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デザインが普遍的であり、メンテナンス次第では長く使用でき、日々の暮らしを豊かにしてくれるモノ。

そんなことを考えていたら、Leicaの機械式フィルムカメラが妙に欲しくなってきた。

フィルムカメラは今では非常に珍しいが、僕にとっては家族の象徴というか、少し照れ臭く、懐かしいモノだ。

父はカメラというより、家族写真を撮影することが好きで、小さい頃、どこかへ出掛けては姉と並ばされ、写真を撮られた。

姉は素直だったが、僕は写真を撮られるのはあまり好きではなく、どちらかと言うと、カメラのシャッターを切る方に興味があった。

何度か試させてもらったが、脇が甘かったのか、緊張のあまり手が震えていたのか、ブレていたりと失敗写真が多かった。

次第に、フィルム代がもったいないというプレッシャーに負け、撮らせて欲しいと自分からせがむことも次第にしなくなってしまった。

その後、僕も中学生になり、家族で写真を撮る機会もめっきり減り、デジカメも出始めて、フィルムカメラを手にすることなく、時が流れた。

今振り返ってみると、フィルムカメラの自動巻き上げ機の作動音、現像された写真を持って帰る道中の風の匂い、開封前には写真が汚れないように手を洗い、家族でみんなでダイニングテーブルを囲って現像された写真を一枚一枚取り出した、古き良きあの頃を思い出す。

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これだけ便利で高機能なデジタルカメラがありふれる時代に、あえて不便で、しかも高級なLeicaのフィルムカメラを手にしたい理由は何か。

どうしても欲しいからという子供じみた理由でしかないというのが本音だが、建前をあえて説明するなばら、

  • 子供の頃に消化しきれなかったフィルムカメラのアナログ体験の続きをしたい
  • 各界の有名人が愛してやまないLeicaというカメラを使ってみたい
  • 節目に相応しいモノを手に入れたい

といったところだろう。

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実は今でも本当に買おうかどうか迷っている。

なくても生活に影響のない純度100%の贅沢品であることもさることながら、

シャッタースピード、絞り値、ピントをマニュアルで調整する手間を不便に感じ、あまり写真を撮らなくなることを恐れているのだ。

今、RICOH GR llと旅している。

リコーGR llのマニュアル撮影を通して、マニュアル設定の所作に馴染めるかどうか、楽しめるかどうか、ゆっくり考えようと思う。