2019年、インドネシアでは5月6日からイスラム教徒たちによるラマダン(断食)がスタート。
日が出ている間、食べ物はおろか、飲み物までも摂取できないという厳しい戒律を、イスラム教徒の方々は毎年、1ヶ月間行います。
中学の授業でこのラマダン(断食)という戒律を習ったとき、
「そんな世界もどこかにあるのだなぁ」
程度にしか思っていませんでしたが、
今は、そんな世界にどっぷり浸かって、暮らしています。運命とは実に不思議なもの。
もちろん、インドネシアに暮らしていても、イスラム教徒でなければラマダン(断食)に参加する必要はありません。
ただ、目の前で「食べ物や飲み物を口にしない」などの、最低限の配慮は必要。
これは、働いている時も例外ではなくて、コーヒーカップを片手に仕事するなんてもっての外。
ダメと言われると、気にしてしまうのが人間のサガ。仕事中、コーヒーを無性に意識してしまう自分がいます。
そんな時は、給湯室や指定の休憩スペースへ。
そこで、あることに気づいたのであります。
「コーヒーはぐびぐび飲む飲み物ではない問題」
基本的に、コーヒーは一度に、一口、二口程度を口に含めるだけ。少しずつ、その時間を楽しみながら、ちょびちょび飲むもの。
飲み終えるまで休憩すると、仕事が捗らないし、
残すことは、日本の「もったいない」精神が許さないのであります。
そこへ、颯爽と現れたイタリア人のスタッフ。エスプレッソをグイッと飲んで、自席へすぐ戻って行ったのでした。
普段は少ない量のエスプレッソで粘りながら、談笑することの多いイタリア人。この日ばかりは、クイック・エスプレッソで、休憩を終えた彼の姿が印象に残りました。
・・・
数年前、パリのシャルルドゴール空港で似たような体験をしました。
空港内の免税店でお土産用のワインをどれにしようか迷っていると、
黒のオーバーサイズ気味のコートを羽織り、コツコツとハイヒールの音を立てながら、ワイン売り場へやってきたのは、ヨーロッパ系の背の高いキャリアウーマン。
延々と迷っている僕を尻目に、彼女はワインの銘柄をロクに確認することなく、その辺に置いてあった一本の赤ワインを手に取り、レジへ流れるように駆け抜けて行きました。
彼女は、海外出張が多く、お気に入りのワインがどこに置いてあるのか熟知している免税店の常連なのでしょう。
そうでなければ、赤いアルコールの飲み物だったら何でもよかった、ただの飲んべえの可能性も。
あっという間の光景に圧倒された僕は、彼女と同じワインの銘柄を抱えて、パリの街を経ったことをなぜか思い出したのです。