道半ばを楽しむ

「旅はしてみるものだ」

司馬遼太郎の『竜馬がゆく』の主人公である坂本龍馬のセリフである。

続けて司馬遼太郎は

「旅好きたちが明治維新を引き起こした」

と綴る。

当たり前であるが、幕末期、ツイッターのような情報を即座に伝播させる手段はなかった。

自分の足で各地をまわり、遊説して、倒幕の気運を盛り上げたのだ。

僕も旅好きであるが、高い志が動機になっているわけではなく、目的地よりも、その道中を楽しむタイプ。

長時間フライトでは、普段手にしないような本に読みふけったり、

高速の渋滞にハマったら、好きな音楽に耳を傾けたり。

新幹線では富士山を横目にシウマイ弁当を食べるのが楽しみ。

目的地に着いた時点で、その目的のほとんどを果たしてしまっているのだから、辿り着いた場所では焦ることなく、その時々の気分にあわせて動くことが多いです。

過程を楽しむことが好き、

登山では、頂上からの景色もさることながら、道中に見つけた珍しい色の花や、高低差によって移りゆく木々の様子を楽しむこと。

もちろん目的と結果は大事だし、それがないと向かうまでの道中も定まらない。

それでも、過程を楽しむことができれば、苦労や努力をしているという自意識を持つことなく、難なく物事を続けることができる。「気づいたら目的を達成していた」というのが理想的。

短期間での成果を他人から求められる時代だけれど、僕はその過程を心ゆくままに楽しんでいきたい。